ハングルを少し読める方なら、日本語の発音をハングルで書いてみたことがあるかもしれません。でも現代のハングルでは、語頭の「か」と「が」はどちらも「가」になり、「つ」は「쓰」や「츠」、「っ」は「ㅅ」で代用されます。
15世紀に作られた訓民正音(以下「正音」)の文字を使うと、こうした日本語の音をもっと細かく書き分けることができます。この記事では、その書き方を表と単語の例で紹介します。
五十音図とサンスクリットの文字表
五十音図の並び方は、インドのサンスクリット語を書くデーヴァナーガリー文字の表とよく似ています。どちらも「か(k)」から始まり、k・t・p の行で無声音(清音)と有声音(濁音)が対になって並んでいます。

空海(774〜835)が唐で悉曇(梵字)の音声学を学んで日本に伝え、その弟子たちがひらがな・カタカナを作ったという説があります。かなは覚える文字の数を減らすため、清音の字に点を二つ打って濁音の字にしました。は行はもともと p の音でしたが、のちに h の音に変わりました。その後 p の音を書く必要が出てきて、半濁点「゜」が加えられました。
サンスクリットの anusvāra(ं)の役目は「ん」が受け持っています。「ん」は後ろに来る音によって [ŋ] [ɲ] [n] [m] と発音が変わりますが、anusvāra も同じように変わります。語末の「ん」はさらに [ɴ] にもなります。

正音で書く五十音図

表の見方:各マスに、かな・ローマ字・正音が並んでいます。灰色のマスは現代ハングルでは書く方法がない音、斜線のマスは使われることが少ない音です。いちばん下の段の「청」は清音、「탁」は濁音、「반탁」は半濁音です。
ポイントは次の5つです。
1. 濁音 が行とだ行は、ㄱ・ㄷ に ㅡ を重ねて書きます(が = ㄱ+ㅡ+ㅏ)。ざ行は、現代ハングルでは使われなくなった文字 ㅿ(z の音)で書きます。ば行は ㅂ のままで、ぱ行(ㅍ・ㅃ)と区別できます。
2. ウ段 日本語の「う」は、唇をあまり丸めず、口の両端を左右に引いて発音します。韓国語の ㅜ とは違う音なので、正音では ㅡ と ㅜ を重ねた母音で書きます。
3. つ ㅊ にウ段の母音と終声 ㆆ を合わせて書きます。「쓰」でも「츠」でもうまく書けなかった音です。字画が込み入って読みにくいときは、形の似た簡単な「츻」で代用することもできます(この ㅎ は有声 [ɦ])。単語の例では「츻」を使っています。「ツンデレ」では、つ の ㅎ と ん(だ行の前)の ㄴ がひとつの終声にまとまります(下の単語の例を参照)。
4. っ(促音) 終声(パッチム)に ㆆ を置きます。ㆆ は声門閉鎖 [ʔ] を表す文字です。
5. ん(撥音) 「ん」は後ろに来る音によって発音が変わり、正音ではその音に合わせて終声を書き分けます。ま・ば・ぱ行の前では [m] ㅁ、た・だ・な行の前では [n] ㄴ、か・が行の前では [ŋ] ㅇ。後ろに何も続かない語末では、舌の奥がさらに喉の方へ引かれた [ɴ](口蓋垂鼻音)になります。韓国語にはないこの音を、正音では終声 ㄶ(ㄴ+ㅎ)で書きます。この ㅎ は有声の [ɦ] で、「ん」を一拍(モーラ)として残す役割もします。
![ウ段・つ・促音っ・撥音ん([m][n][ŋ][ɴ])の正音表記 / Jeongeum spelling of Japanese u-row, tsu, small tsu and n by sound](https://i0.wp.com/hun-min.com/wp-content/uploads/2026/11/jp-u-tsu-sokuon-n-jeongeum-v7-1.png?resize=660%2C424&ssl=1)
単語の例
右の列は、現在の韓国の外来語表記法による書き方です。

現代ハングルでは同じ綴りになる言葉
現代ハングルでは語頭の清音と濁音を区別しないので、次の言葉はそれぞれ同じ綴りになってしまいます。正音なら書き分けられます。

中島美嘉「雪の華」の歌詞全体を正音で書いた例は、こちらの記事(韓国語)で見られます。デーヴァナーガリーとかなの比較について詳しくは、こちら(韓国語)をご覧ください。
出典:진현수(Jin Hyunsoo)『正音으로 듣고쓰다』243〜248ページ






